2級建築士試験の学科試験に出題される近現代史の建物実例、特徴、建築家について解説します。
下記は試験に出題されている建築物一覧です。
クリスタルパレス(水晶宮)
1851年に開催された、ロンドン万国博覧会の中心施設。
イギリス人、ジョセフ・パクストンの作品。
鉄骨、ガラス等の部材を工場でつくる、プレファブリケーション手法を採用。
当時のイギリスの経済力・産業力を示す建築物として注目された。
ちなみに…
ジョセフ・パクストンは政治家でもあり、バナナの栽培品種「キャベンディッシュ」の栽培もおこなっていました。
バナナ、ジョセフ・パクストン、クリスタルパレスと関連付けて覚えてもよさそうです。
※逆に覚えづらいでしょうか…
ロビー邸
アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの作品。
プレーリーハウスの代表作。
プレーリーハウスは、アメリカの大草原の自然と調和するような住宅のタイプ。
緩やかな傾斜の屋根、水平線デザインが特徴。
フランク・ロイド・ライトは近代建築の三大巨匠と呼ばれる。
代表作品は、帝国ホテル、自由学園明日館、カウフマン邸(落水荘)、ジョンソンワックス社事務所棟、グッゲンハイム美術館など。
カフウフマン邸(落水荘)1936年
自然との調和を図った有機的建築。
アメリカのペンシルヴェニア州に建てられた。
周りの滝や岩と一体的に設計されていることが特徴。
滝の上に家が建っているような感じです。
アメリカの大富豪エドガー・カウフマンの「滝を眺めて過ごしたい」と富豪らしい要望に応えた作品。
シュレーダー邸(オランダ、1924年)
家具職人だったオランダ人、リートフェルトの住宅作品。
外壁など面の部分は白やグレー、サッシなど線の部分は青・赤・黄の三原色のデザイン。
デ・ステイルの代表的作品。
デ・ステイルとは、曲線を使わず、抽象的形態の構成によって建築を計画したもの。
シュレーダー夫人と3人の子供のために建てられた2階建て住宅。
1階のキッチンから2階へ食事を運ぶリフト、1・2階をつなぐ伝声管など、母親と子供が暮らしやすい工夫がされている。
2階はワンルームを引き戸で仕切れるようになっており、当時は画期的なデザインだった。
リートフェルトは妻と死別した後、シュレーダー夫人とこの住宅で過ごし、シュレーダー邸で亡くなっている。
サヴォア邸(フランス、1931年)
ル・コルビュジェの設計。
近代建築の5原則(ピロティ、屋上庭園、自由な平面、自由な立面、水平連続窓)の理念を体現化している。
1931年フランスに建てられた。
1階は車庫があるピロティとなっている。2階が居住部分。1階から屋上まで続くスロープと屋上庭園がある。
ル・コルビュジエはスイス生まれで、主にフランスで活躍した。
もともと時計職人を目指していたが、時計産業の斜陽化・視力が弱いなどの理由で建築の道へ進む。
クルチェット邸、ユニテ・ダビタシオン、ロンシャンの礼拝堂、国立西洋美術館、チャンディーガル議事堂などが代表作。
前川國男、吉阪隆正、坂倉準三などを教えた。
ロンシャンの教会
ル・コルビュジェの設計。
1955年、フランスのロンシャンに建てられた。
鉄筋コンクリートの二重シェル構造による大きく反り返った屋根が特徴。
直線的な構成のサヴォア邸とは大きく異なる作風。
正面ファサードはカニの甲羅を形どったとされる。
建物の側面の小さく不規則に並んだ窓も特徴的です。
ファンズワース邸(1950年、アメリカ)
ドイツ出身のミース・ファン・デル・ローエの作品。
アメリカに建てられた、鉄とガラスによる構成の住宅。
平屋建で、内部には浴室やキッチンを納めたコア以外に壁はなく、将来の間取りの変化に対応できるユニバーサル空間。
女性医師ファンズワースの週末住宅として建てられた。
建築コストの高騰や、設計料未払いなど、訴訟に発展した。
シンプルをモットーとするミース・ファン・デル・ローエの「レス・イズ・モア」の考えが表現された作品。
ミース・ファン・デル・ローエはバウハウスという建築学校の校長を務めていたが、ナチスにバウハウスが閉鎖され、アメリカへ亡命した。
ファン=ファンと覚える。
※はまちゃん動画より
母の家
1962年、ロバートヴェンチューリの作品。
アメリカのポストモダニズムの代表的建築家。
木造2階建て、左右対称の切妻の屋根が特徴。
外観は単純で左右対称だが、内部は非対称の構成となっている。
ロバートヴェンチューリはファンズワース邸を設計したミース・ファン・デル・ローエの「レス・イズ・モア(少ないことはより豊かである)」を批判して「レス・イズ・ボア(少ないことは退屈である)」と皮肉で表現した。
切妻屋根の正面が四角く切り取られているような形状が特徴的です。
ロバートヴェンチューリの師匠はフィッシャー邸、キンベル美術館などを設計したルイス・カーンですが、母の家の設計に対してはルイス・カーンは否定的だったそうです。
フィッシャー邸(1967年、アメリカ・フィラデルフィア)
アメリカの建築家ルイス・カーンの設計。
アメリカ、フィラデルフィアの郊外に建てられた住宅。
2つの立方体が約45度の角度で接合された形状の住宅。
自然光を活かした幾何学的空間構成。
ボックスを45度傾けて、狭い間口で接続するという、特殊な形状が特徴的。
ルイス・カーンは「母の家」などを設計したロバートヴェンチューリの師匠。
キンベル美術館、ソーク研究所などが代表作。
シドニー・オペラハウス(オーストラリア、1956年)
ヨルン・ウッツォンの設計。
1973年、国際コンペにより選出。
オーストラリアのシドニーに建てられた。
白いプレキャストコンクリートによる円弧状の球面シェル群の外観が特徴。
世界遺産に登録されている。
コンペで選出されたヨルン・ウッツォンは、デンマークの建築家で、当時まだ無名だった。
特殊で斬新な形だったため、工事に14年かかり、建設費も予算の14倍に跳ね上がってしまった。
建設中にヨルン・ウッツォンとクライアントの間で支払いなどで折り合いがつかず、設計者から辞任させられてしまう。
オペラハウスが完成する頃にはヨルン・ウッツォンはオーストラリアにいなかったとのこと。
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