2024年12月、日本を代表する建築家・谷口吉生(たにぐち よしお)氏が87歳でこの世を去られました。
「美術館建築の名手」と謳われ、一切の無駄を削ぎ落としたシャープなディテールと、水や光を巧みに取り込んだ静謐な空間で知られる谷口氏。本記事では、その輝かしい経歴と、私たちが今も訪れることができる代表作について解説します。
谷口吉生の経歴と建築の特徴
1937年、同じく著名な建築家である谷口吉郎の長男として誕生。慶應義塾大学工学部からハーバード大学へ進み、建築の巨匠・丹下健三の事務所を経て独立しました。
- 作品で見せるスタイル: 自身の建築について多くを語らず、コンペへの応募も極めて少ない(MoMAは数少ない例外)という、職人気質なスタイルを貫きました。
- 徹底したディテールへのこだわり: ガラスやタイルの目地(つなぎ目)を完璧に揃えるなど、緻密な計算に基づいた美しさが特徴です。
- スケール感と水: 巨大なアーケードと小ぶりなエントランスを対比させるなど、極端なスケール感を共存させる手法や、水面を効果的に使った空間設計に定評があります。
世界が認めた代表作
■ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館
谷口氏が珍しくコンペに参加し、数多の世界的建築家を退けて勝ち取ったプロジェクト。
2004年に増改築が完成。1階から6階まで突き抜ける巨大な吹き抜け(アトリウム)により、マンハッタンの喧騒の中に開放的な展示空間を生み出しました。
■ 豊田市美術館(愛知県)
高台の立地を活かした設計。アプローチからあえて外観を隠して歩かせるなど、来館者の期待感を高める工夫が随所に見られます。
水平・垂直のラインが強調された外観と、静かな水面が織りなす景色は圧巻です。
■ 葛西臨海水族園(東京都)
葛西臨海公園のシンボルであるガラスのドームが有名です。
水面と建築が溶け合うようなデザインは、谷口氏の「水」を扱う卓越したセンスを象徴しています。
■丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA / 香川県)
駅前広場と一体となった、市民に開かれた美術館です。
猪熊弦一郎の巨大な壁画が描かれたゲートプラザは、街の風景として愛されています。建築士試験の頻出作品でもあります。
■鈴木大拙館(石川県)
金沢出身の仏教哲学者、鈴木大拙の思想を伝える場所。
「思索空間」と呼ばれる水面に浮かぶような建物は、訪れる人が静かに自分と向き合えるよう設計されています。
■広島市環境局中工場(広島県)
「美術館のような清掃工場」として世界的に話題となりました。
あえて工場らしさを隠さず、美しく機能的に見せることで、生活に不可欠な施設へのイメージを一新。映画『ドライブ・マイ・カー』のロケ地としても有名です。
親子二代の絆:父・谷口吉郎
父・吉郎氏(帝国劇場や東京国立近代美術館の設計者)とも深い関わりがあります。
金沢市には「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」があり、親子二代の業績に触れることができます。
親子共同設計の「金沢市立玉川図書館」など、故郷・金沢の街づくりにも大きく貢献しました。
まとめ
谷口吉生氏の建築は、一度訪れただけでは気づかないほどの「細部(ディテール)の美しさ」に満ちています。タイル一枚の割り付けまで計算し尽くされた空間は、私たちに深い安らぎと感動を与えてくれます。
週末や旅先で、ぜひ谷口氏が遺した美しい建築に足を運んでみてはいかがでしょうか。
↓参考動画


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